僕はヒースレジャー

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社会に適合しようとして自分を見失う

東京・目黒区の自宅で、合成麻薬MDMAを所持していたとして麻薬取締法違反容疑で女優の沢尻エリカ容疑者が逮捕された

このニュースが世間を騒がせてから、はや2年くらい経過していた。今日ふと思い出したことがある。

「僕さん、ちょっといいですか?」言葉が背中にぶち当たる。すると、条件反射のように振り向き、愛想を振りまいた偽の笑顔で対応する。そこに自分は居ない。「お前はすぐ表情に出る。嫌な時に嫌な顔をするな。大人になれ。」新人だった私が一番印象に残っている指導だ。それからというもの自分の感情を押し殺すようになった。怒られた時は楽しくもないのにヘラヘラしている。楽しくもないのにみんなが笑っているから笑っておく。だいたいのことは笑っていれば済まされることに気づいた私は、笑顔を作るようになった。もう社会人になって4年ほど経つ。今では、顔の筋肉が勝手に動く。口角が上がり、目の周りの筋肉が緩む。偽の笑顔の完成だ。家にたどり着くと、どっと重力が増す。深いため息をする。「ピンポーン」チャイムが鳴る。「宅配便です。」アマゾンで注文したのが届いたようだ。玄関を開け、段ボールを受け取る。「お名前を確認してください。よければサインをお願いします。」サインを書きながら、ふと気づく。宅配のおじさんに愛想を振りまいていることに。休みになり、スーパーに買い物に行く。レジで「袋はご利用されますか?」「大丈夫です。」と言いながら、マスク越しだと声が伝わりづらいと思い、ジェスチャーを交えて返答する。ふと気づく。レジのおばちゃんに愛想を振りまいていることに。あれ?今の僕はどっちだ?まてよ。というよりも本当の自分ってどんなんだったっけ?全員から嫌われたくなくて全員にいい格好したくて社会に適合しようとして相手の都合のいいような人を演じすぎて本当の自分を見失った。そんな時、沢尻エリカの事件を思い出す。当時、彼女の常習性がテレビで取り沙汰され、その時にユーチューブのおすすめに僕らの時代という番組の切り抜きが出ていた。内容は、小栗旬が薬物と役者の関係性について話していて、それを聞いていた彼女が目の前の水を飲むという動画。多分普通に喉が渇いたから飲んでいるのだろうが、コメント上では、それが心理学的には話から自分を逸らす動作だということを書かれていた。僕はこの動画を見て彼女に興味を持ったわけではなく、小栗旬の話に登場したヒースレジャーという俳優のことに興味を抱いた。彼は「ダークナイト」という映画でジョーカーの役を演じ、公開の直前に急死した。原因は急性薬物中毒だった。徹底して役作りにのめり込み、不眠症になったことが死の要因とも噂されているという。彼の伝説的な演技でアカデミー賞でノミネート、死後である彼にも助演男優賞が受賞されたという。小栗旬は彼について共感していた。「現実がどこかわからなくなっちゃう」と。当時の僕は、役者の仕事って大変だなと他人事のように思っていた。あれから2年経ち、僕も今ヒースレジャーに共感する。僕は、役作りを4年かけてしていることになる。そりゃあ自分を見失うのもわからなくはない。しかも、相手によって演じる役を少し変える。上司、部下、同期、取引先の相手。僕は薬物には手を出していない。なぜならそういう役は回ってこないから。優等生、いい人、いじられキャラ、話のわかる人。この中に薬物は含まれない。だがもし、周りの環境が違い、その役が回ってきていたのだとしたら、僕は薬物をやっていたのかもしれない。だから僕は沢尻エリカという女性を無碍にはできない。

春の訪れ

自分の上司が変わった。入社してからずっとお世話になっている先輩だ。前の上司から自分の病気や現状を教えてもらっていたのだろう。「ぶっちゃけこれからどうしたいと思ってるの?」「正直退職したいです。」初めて言えた。喉につっかえていたものが取れた。今までずっと我慢してきた言葉がようやく言えてことに感動する。先輩は、素直に承諾して上の者と話をする機会を作ってくれた。「次は人となるべく関わらない仕事につきたい」今なら強い言葉で言える。役を演じる必要のないありのままの自分を受け入れてくれる場所を探る。そして役者人生にピリオドをつける。

春の訪れとともに上着を脱ぐように少しずつ一枚一枚自分の側を剥いでいく作業をこれからしていこうと思う。

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